【Takahashi et al. (2018) マコガレイ成魚の摂食日周性と日間摂食量】

2020年06月19日 13:44
著者:Satoshi Takahashi, Yutaka Kurita, Hiroyuki Togashi, Takeshi Tomiyama
題目:Diel feeding rhythms, daily ration, and seasonal changes thereof in marbled flounder Pseudopleuronectes yokohamae
掲載誌:Journal of Applied Ichthyology 34: 888-895 (2018)
論文閲覧:広島大学リポジトリ公式HP


 仙台湾におけるマコガレイの日間摂食量とその季節変化について報告した論文です。2015年度の卒業論文で研究した高橋聡史君がとりまとめてくれました。彼が研究室に配属される前の2014年7月に、私は研究室の学生の新野君と重松君とともに、水産研究・教育機構東北区水産研究所の栗田さんと冨樫さんが企画された若鷹丸の昼夜底びき網調査に乗船させてもらいました。仙台湾の水深30mぐらいの場所で、3~4時間おきに底びき網を30分間曳網して、採集したヒラメやカレイ類の胃内容物から摂食量を調べることが目的です。私たちはマコガレイを担当しました。東日本大震災後に仙台湾から常磐海域にかけてヒラメなどの底魚資源が急増したことで、30分の曳網でも毎回すさまじい量のヒラメやカレイ類が採集されました。水揚げすると、次の曳網までの間に船上でサイズの測定、胃の摘出、雌雄判別、耳石摘出を行いました。7月なので気温は20℃以上ありましたが、水温は10℃ぐらいであったためか、水揚げされた魚はすぐに弱ってしまい、そのため活きたまま測定することはありませんでした。また、船上での測定は毎回10~20個体が限界で、あとは一部を凍結しました。こうして4泊5日の航海で夜間3回、日中8回(4回×2日)の採集を行い、台風の接近を受けて1日早めの帰港となりました。

(参考:調査報告書



(若鷹丸の甲板で採集した魚の選別の様子。)


 下船後、サンプルを広島大へ送ってもらい、10月に研究室に配属された高橋君が測定や計測を行うことになりました。船上で摘出され、ホルマリン固定されたマコガレイの胃、そして凍結されたマコガレイの測定という、いわば現場の実感がない中での作業で大変だったと思いますが、何とかやりきってくれました。ただ、広島大の飼育実験棟にあった冷凍室が2015年3月末に故障して、数回分のサンプルが腐ってしまったことが残念でした(強烈な腐敗臭でたくさんの人にご迷惑をおかけしたようで、申し訳なかったです)。


(マコガレイの測定に取り組む高橋君。筆記は同級生の宮木君。)


 卒論では2014年7月の昼夜調査のデータをとりまとめて日間摂食量を推定できました。しかし、日間摂食量は水温や生活年周期に影響を受けて、季節的に変化すると考えられます。これを考慮するために、東北区水産研究所の栗田さんらがマコガレイ胃内容物重量の季節変化を調べておられました。そのデータを加えさせていただき、博士課程前期に進学した高橋君が論文にまとめることになりました。データ解析に苦労しましたが、2017年に何度か原稿のやりとりを行い、英文校正を経て8月にFishery Bulletinに投稿しました。しかし、査読者から厳しいコメントとともに11月に却下されてしまいました。次に投稿したEnvironmental Biology of Fishesではエディターから門前払いされ、2018年1月にJournal of Applied Ichthyologyに投稿して3月にMajor revisionの判定となりました。高橋君が修士論文を提出して就職した後の4月に、改訂原稿を投稿して受理されました。5月にオンラインで掲載され、8月号で誌面に掲載されました。
 この論文では、特に空胃個体の扱いに苦労しました。胃内容物重量が魚の大きさや雌雄、時間帯などで変化するのかを解析する際、胃内容物重量(応答変数)と他の説明変数を一般化線形モデルで解析する手法がありますが(水産研究・教育機構の服部さんがキチジについて2009年にFisheries Science(75巻611-618)に発表した論文)、対数をとるために空胃個体の胃内容物重量はゼロでは扱うことができません。そこで、いろいろ試した結果、極めて小さい値(0.00001g)を加えることで結果が安定することがわかりました。大いに勉強になりました。

 なお、この論文の内容は2016年3月の日本水産学会で高橋君がポスター発表しました。 



(ポスター発表中の高橋君。)

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