【Okamoto et al. (2018) ミャンマーのタチウオ類の分類】
題目:Species composition of hairtails (Trichiuridae) in Myanmar
掲載誌:Regional Studies in Marine Science 17: 73-77 (2018)
論文閲覧:広島大学リポジトリ、公式HP
ミャンマーにおけるタチウオ類の種構成について報告した論文です。2015年度に卒業論文の研究としてミャンマーのタチウオ類の研究を行った岡本直大君がとりまとめてくれました。2014年から広島大学の小池先生の科研費によるプロジェクトが始まり、私はミャンマーの漁業生産に関することを担当することになりました。といってもミャンマーのことはさっぱり知らず、さて何を研究したらよいのやら、ということで、雨季が明ける頃合いを見計らって2014年9月末に小池先生の研究室のミャンマー出身留学生(Htoo-Thawさん)とともにミャンマー(ヤンゴン)へ出かけました。そして市場(Jetty)に連れていってもらって、水揚げを視察。目に付いたのが大量に水揚げされていたエビ類とタチウオ類でした。そこで、タチウオ類の資源生態を調べるため、翌年の雨季前の2015年5月に卒論生の岡本君、Htoo-Thawさんとともに再度ミャンマーを訪れました。国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の藤井さん、込本さんも一緒にあちこち訪問しました。そして、ヤンゴンだけでなく、小池先生たちの調査地であるミエックも訪問し、それぞれの場所で水揚げされたタチウオ類を購入して現地で測定したり筋肉片や耳石の標本を取ったりしました。ミエックではミエック大学の施設をお借りして測定しましたが、ついでに(?)ミエック大学で講演を頼まれて30分ほど話をしました。ヤンゴンではJettyの一角で測定をさせてもらいました。ハエがブンブンと飛び回る中での測定はなかなか大変でした。余談ですが、ミャンマーではタチウオ類をRibbonfishと呼んでいました。しかし、この英名はフリソデウオ科という別のグループに使われるようで、論文ではHairtailという英名を用いました。
(ミエック大学の中で測定中の岡本君。ギャラリーの視線が気になりました。)
(ヤンゴンのJettyでの測定。水揚げ、販売のすぐ横で測定させてもらいました。こちらも見物客が見守る中での測定でした。写真左がHtoo-Thawさん。)
サンプルとデータを集めて帰国した後、まずは水揚げされたタチウオ類の種類判別から始めました。あいにく遺伝的な解析は私が未経験であったため、研究室の柴田さん、海野先生の研究室の大学院生の苫野さんにサポートしていただきました。その結果、市場で2、3種類だろうと思っていたタチウオ類が、少なくとも5種含まれていることがわかりました。分類の検討に際しては、宮崎大学の岩槻先生にご教示いただきました。また、日本のタチウオ類のサンプルも外群として含めることとし、瀬戸内海で漁獲されたタチウオに加え、オキナワオオタチとテンジクタチの標本を琉球大の國島さんの協力のもと入手しました。遺伝的な解析に基づく分類の情報と、市場で調べた食性(胃内容物)の情報を整理して、岡本君が論文の執筆を2017年2月に開始しました。英文原稿のやりとりを経て、6月末にJournal
of Applied Ichthyologyに投稿しましたが、あえなく門前払いとなりました。そこで、7月初旬にRegional Studies
in Marine
Scienceに投稿し、9月下旬に要修正の判定となりました。査読者から分類の論文としてまとめ直すよう(食性の情報は割愛するよう)指示を受けたため、そのとおりに修正し、改訂稿を投稿して11月に受理されました。2017年12月にオンラインで掲載され、2018年1月の誌面に掲載されました。この雑誌は2015年発刊ということもあり、この時点ではインパクトファクターが付いていない雑誌でしたが、2018年(2017年分)以降はインパクトファクターが付いています
。
残念ながらミャンマーでの研究についてはこれ以上の進展はありませんでしたが、成果を一つ残すことができてよかったです。また、この論文をきっかけに、2018年に国立台湾大学の陳教授からの依頼があり、オシロイダチ属(Eupleurogrammus)のサンプル(筋肉片)の提供を行いました。
なお、この論文の内容については、2016年3月の日本水産学会で岡本君がポスター発表を行いました。
(ポスター発表する岡本君。)
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