【Ichikawa et al. (2026) 瀬戸内海西部におけるイシガレイ稚魚の摂食・成長・生残】

2026年10月08日 18:45

著者:Yui Ichikawa, Tetsuo Yamada, Alvin H. Bantiquete, Hiroyuki Sudo, Takeshi Tomiyama

題目:Feeding, growth, and survival of juvenile stone flounder Platichthys bicoloratus in the western Seto Inland Sea, Japan: Implications for nursery ground quality

掲載誌:Estuarine, Coastal and Shelf Science 343: 110295 (2026)

論文閲覧:広島大学リポジトリ(予定)、公式HP 


 瀬戸内海西部の周防灘の沿岸において、イシガレイ稚魚の成育場における生態について報告した論文です。2025年度に博士課程前期を修了した市川由唯さんの修士論文が大部分となっています。彼女は沿岸性魚類の初期生活史に関心があり、大学院から研究室に来てくれました。ちょうど山口県山陽小野田市で、水産研究・教育機構の山田徹生さんが中心となって、ヒラメ稚魚の調査が行われており、混獲されるイシガレイ稚魚を用いて摂食や成長などを調べました。調査した海域は、イシガレイの分布の南限にあたる場所です。


(桁網調査。水色のウェアを来ているのが市川さん) 


(採集されたイシガレイ稚魚)



  実は、広島湾でもイシガレイ稚魚を過去に調べていたことがあり、今回も広島湾の干潟でイシガレイ採集を試みたのですが、ほとんど採集できなかったことからこちらは断念しました。


(広島の干潟で採集したイシガレイ。ほとんど採集できなくなってしまいました) 



 市川さんが研究を開始した2024年の時点で、すでに2022年と2023年のサンプルがあったことから、これに2年分のサンプルを加え、市川さんが胃内容物や耳石の解析を進めました(2025年の一部は冨山が解析)。その結果、二枚貝の水管などを主な食物としていることが知られていた仙台湾とは異なり、この海域ではイシガレイ稚魚は多毛類や端脚類(ヨコエビ類)を主な食物としていることがわかりました。特に周辺に大きな流入河川がなく、二枚貝が少ないことも関係しているのかもしれません。なお、2025年にはアサリとみられる二枚貝の水管が稚魚から2例だけ出現しました。


(アサリとみられる二枚貝の水管。全長71mmの稚魚から出現しました)



 そのほか、耳石日周輪解析による個体成長や、見かけの生残を明らかにし、この海域では特に成長が良いわけではないものの、分布の南限といってもそれなりに成育場としての質が保たれていることが示されました。以上の成果について、市川さんが2025年10月から執筆を開始し、冨山と6回のやりとりを経て、原稿を2026年5月に完成させ、水産研究・教育機構の許可を得て6月上旬にEstuarine, Coastal and Shelf Scienceに投稿しました。1回目の審査結果(要大修正)が7月下旬に届き、改訂に苦労したものの、8月中旬に改訂原稿を投稿しました。2回目の審査結果(要修正)が9月中旬に届き、修正して投稿し、受理されました。そして2026年12月号に掲載されました。市川さんのがんばりが形となってよかったです。

 なお、この内容について、2ヶ年にわたってお世話になった山口県の漁業者に説明を行い、また2024年度にはフィリピンのシンポジウムで、2025年度には日本水産学会で発表を行いました。

 

(漁業者への説明会2024年度) 


(漁業者への説明会2025年度) 



(フィリピンでも発表) 

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