【奥友ほか (2026) 瀬戸内海中西部におけるヨコスジフエダイの再生産】
著者:奥友雄大, 國狭柚香, 山本啓斗, 大西瑠美奈, 坂井陽一, 藤本純一, 冨山毅
題目:瀬戸内海中西部におけるヨコスジフエダイの再生産の初記録(短報)
掲載誌:日本水産学会誌 92: xx (2026)
論文閲覧:広島大学リポジトリ(予定)、公式HP
瀬戸内海における南方系魚類ヨコスジフエダイの再生産の初記録を記載した論文です。2025年度に博士課程前期を修了予定の奥友雄大君が、2023年度の國狭柚香さんの卒業論文をベースに、2024年度にも研究を継続し、とりまとめてくれました。
ヨコスジフエダイは亜熱帯域や熱帯域に多く生息するフエダイ科の一種で、当研究室でも2017~2019年に幼魚の釣獲記録がありました(坂井先生記録)。瀬戸内海では温暖化の進行に伴っていくつかの魚種が増えたり減ったりしていますが、ヨコスジフエダイは増加傾向にある魚種の一つです。
私たちが竹原市の阿波島で実施していた地曳網調査で、2022年9月にヨコスジフエダイの稚魚が11尾採集され、またシュノーケリング観察を通じて、稚魚が浅場で群れをなして泳いでいる様子が確認されました。このようなヨコスジフエダイ稚魚のまとまった出現は瀬戸内海では報告がありませんでした。そこで、「ヨコスジフエダイは瀬戸内海で産卵しているのか、何を食べているのか」について卒業論文の研究テーマにすることとしました。問題は成魚の収集でした。市場で水揚げされているのをみたことがほとんどなかったため、マダイの調査に協力いただいていた愛媛県今治市の漁業者である藤本さんに相談したところ、5月以降なら漁獲されることがあると教えていただき、収集を依頼しました。2023年6月上旬に成魚17尾を送っていただき、生殖腺が発達し始めていること、魚類や甲殻類を摂食していることなどがわかりました。しかし、この年は7月以降にクラゲ(おそらくミズクラゲ)が多すぎて漁にほとんど出られなかったとのことで、それ以降に採集することはできませんでした。
(2023年6月のヨコスジフエダイ)
(阿波島にて2022年9月にシュノーケリング観察で見たヨコスジフエダイ稚魚の群れ)
一方、2023年9月には阿波島で地曳網調査を実施し、ヨコスジフエダイの稚魚は採集されませんでしたが、調査に同行した中国新聞社の記者である河合佑樹さん(研究室OB)が潜水してヨコスジフエダイ1尾の写真を撮ってくれました。
2024年にも藤本さんにヨコスジフエダイの収集を依頼しました。7月に10尾、8月上旬に3尾、8月下旬に26尾を採集していただくことができ、8月下旬の個体からは精子や吸水卵が確認されました。すなわち、ヨコスジフエダイが瀬戸内海で産卵していることが確認できました。一方、2024年の地曳網調査ではヨコスジフエダイを確認することはできませんでした。
2025年も調査を継続することとしましたが、藤本さんによるとヨコスジフエダイの入網がほとんどなく、5尾程度しか集められなかったとのことでした。阿波島の調査では、9月に奥友君が執念で稚魚1尾を小型のタモ網によって採集しました。
成魚のヨコスジフエダイについては、体サイズや生殖腺の観察とともに、奥友君が耳石を摘出し、横断切片を作成して年齢査定にも取り組みました。耳石輪紋から、2~12歳の個体が出現していたと推定されました。
以上の内容を、奥友君がとりまとめ、2025年9月に初稿を完成させました。その後にやりとりをしたり藤本さんにも聞き取りをしたりして、共著者全員の了解を得て日本水産学会誌に短報として投稿しました。しかし、「ヨコスジフエダイの食性、成長、成熟」というタイトルにしたため、「なぜ周年調べないのか」「食性の情報の精度が低い」といった指摘を受けて11月にリジェクトになってしまいました。奥友君と相談し、この論文では成魚の成熟状態と稚魚の出現に基づく再生産の記録を記載することが最重要と考え、編集委員長に再投稿を許可いただいたうえで、書き直して再度日本水産学会誌に短報として投稿しました。12月に審査結果を受け取り(要修正)、修正を2回行って12月下旬に受理されました。2月21日に早期公開されました。
奥友君の粘り強い努力で論文として記載できてよかったです。
なお、論文ではほとんど議論していませんが、不思議なことがあります。愛媛県(燧灘)で得られたヨコスジフエダイは8月下旬に産卵しているものと推測されました。一方、2022年9月7日に阿波島で採集された稚魚は、全長32~35mmの2個体と72~82mmの9個体でした。仮に8月上旬に産卵する個体がいたとしても、その卵から生まれて1ヶ月程度で(32~35mmならまだしも)70mm以上に達するとは考えにくいです。すなわち、もっと早く産卵した集団由来の稚魚であった可能性が考えられます。稚魚の耳石日周輪解析等によって、産卵期と稚魚出現期のギャップ問題を解決することが残された課題です。
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