【吉田ほか (2019) 広島湾の干潟の魚類相】

2020年06月19日 14:06

著者:吉田侑生, 上原大知, 小路淳, 冨山毅
題目:広島湾の砂浜海岸,河口域およびアマモ場における魚類相
掲載誌:水産技術 12: 31-37 (2019)

論文閲覧:広島大学リポジトリ、公式HP(PDF) 



 広島湾の干潟における魚類相について報告した論文です。2015年度に卒業論文の研究として地曳網調査を行った吉田侑生君がとりまとめてくれました。前年5月に福島県水産試験場相馬支場(当時)を訪問した際、福島県の松川浦でカレイ類稚魚の採集を行うときに使われていた地曳網がとても強力で、様々な稚魚が採集されていたので、これを使おうと考えました。ただ、使われていた地曳網の袖網が5mと長かったので、扱いやすいように袖網の長さを2mに改良して発注しました。調査では、異なる3タイプ(砂浜、河口域、アマモ場)の潮間帯で干潮時に30m地曳網を曳く、という方法で、2015年1月に場所を選定して2月から1年間、毎月調査を行いました。1日に4箇所(砂浜は2箇所)の干潟を回って網を曳くのですが、特に河口域はやや泥っぽくて曳くのが大変そうでした。



(砂浜にて地曳網を曳網しているところ。吉田君は深い方を担当するのでドライスーツを着ています。)


(8月にアマモ場で採集した魚類。クサフグ、ヨウジウオ、アミメハギ、アイゴ、クロダイなどが採集されました)


 12ヶ月間の調査を終え、卒業論文をまとめた後、大学院に進学した吉田君が原稿を執筆しました。調査をほとんど毎回手伝ってくれた同級生の上原君、調査場所の選定や種査定をお手伝いいただいた小路先生にも共著者として加わってもらい、2017年2月に日本水産学会誌に投稿しました。投稿の作業も責任著者も吉田君に任せることにしました。私としても貴重な記録と考えていたのですが、査読者からは各地点1回だけの曳網で反復がないことを問題視され、残念ながら4月に却下となりました。そこで水産技術に投稿することにしました。そこからがとても長い道のりになってしまいました。
 2017年5月に吉田君が水産技術に投稿しましたが、全く音沙汰がなく、9月に事務局に問い合わせたところ、書式の問題を指摘されました。すぐに吉田君が修正して再投稿したのですが、担当編集委員が決まったのが11月とのことで、なんと投稿から半年も査読に回らないまま、になっていました。2018年2月に査読結果が来ましたが、技術(通常論文)ではなく資料という扱いにするよう助言があり、全面的に吉田君が対応して修正し、投稿しました。こうして査読者に3回、編集委員に6回もの修正を指示され、2019年3月にようやく担当編集委員からOKが出ました。この途中の2018年4月から私が水産技術の編集委員に就任したことで仕組みがわかりましたが、正式な受理は編集委員会で編集委員全員の意見をもとに決定することになっており、2019年9月に最終修正を経て受理されました。そして2019年12月号での掲載となり、2020年3月に水産技術のwebsiteでも公開されました。
 この論文はほとんど吉田君の努力によるところが大きく、2018年4月に就職してからも粘り強く改訂に取り組んでくれました。また、編集委員会の席で、編集委員長から「温暖化などで状況が変化していくことから、このような調査内容は大変貴重で掲載すべき」との評価をいただいて、うれしく思いました。

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